ヒナキキョウソウ(雛桔梗草)もキキョウソウ(桔梗草)も北アメリカ原産の帰化植物で、キキョウ科キキョソウウソウ属の 1年草です。日本には明治中期に入り、第二次大戦後に広まりました。キキョウ(桔梗)に似た花を咲かせる草というのが名前の由来です。
ヒナキキョウソウの茎は直立して分岐せず、葉は卵形で低い鋸歯があり、無柄で互生、茎を抱くことはありません。春から夏にかけて葉腋に紫色の星形の花を一つずつ着けます。別名はヒメダンダンギキョウ。
キキョウソウの茎は直立して下部でまばらに分岐し,高さ60 cmほどになります。花は通常紅紫色で白色から濃紫色まで変異します。現在では東北南部以南に広く分布し、別名はダンダンギキョウ。
キキョウソウもヒナキキョウソウも開放花の他に、閉鎖花をつけます(ヒナキキョウソウの画像の青線で囲んだ部分にあるのが閉鎖花)。私たちが普通に見る花の姿が「開放花」で、その特徴は「昆虫のような受粉媒介者の行動を借りて受粉し、遺伝子を交換する。花を咲かせるのに多大なエネルギーを費やし、広範な場所に種子(遺伝子の乗り物)を移動させる」ことにあります。一方、閉鎖花は「花冠の一部または全体が開かず、同一個体で自家受粉する。自家受粉によって確実に次世代の種を作ることができ、そのために費やすエネルギーも少なく、効率的だが、遺伝子の多様性は望めない」のが特徴です。
閉じた花である閉鎖花は自己完結的、自己防衛的で、閉じた世界を作っています。一方、開いた世界で遺伝子を交換し、自然選択によって変化していくのが開放花です。いずれも世代交代によって子孫を残していく生物の生存戦略なのですが、実に好対照の戦略なのです。キキョウソウもヒナキキョウソウも閉鎖花と開放花の両方をつけます。多様な環境に対処するため、好対照の戦略を併用している訳で、可憐な花姿とは裏腹に、見事な戦略家なのです。