トベラは雌雄異株で、その花期は春。実のつかない雄株の方が葉の色が濃く、雌株の葉の緑色は薄いように見える。湾岸地域にはトベラがとても多く、そのトベラが今の季節になると、驚くような姿を見せる。それを見ていると、リンネの分類学の着眼点が植物の生殖とそのエロティシズムにあることを私は想起してしまう(*)。
トベラの雌株につく実は果皮が3枚に割れて開き、中からたくさんの赤い種子が現れる。それが何とも生々しく、艶めかしい。赤い種子と緑色の葉との色のコントラストも鮮やかで、種子はべたつく赤い粘液に被われていて、舐めても甘くない。種子はメジロなどが食べるが、種子が赤いのは表面だけで、中の大部分は白い胚乳。鳥たちはトベラの種子の見かけの容姿に騙され、その戦略に操られているように見える。
*チャールズ・ダーウィンの祖父エラズマス・ダーウィンはロマン主義文学とリンネの植物学がミックスされた自著『植物の園(The Botanic Garden)』(1791)がエロティックだと批判されると、リンネの分類学の本質がエロティシズムにあると反論している。両性植物は花と実の両方を使って動物を誘惑している。
画像は昨日のトベラで、赤い種子が見事に同期したかのように見えている。私の眼もその姿に惹きつけられ、暫し時を忘れることになった。
トベラの実 誘惑するか その色で