トベラの赤い種子

 トベラは雌雄異株で、その花期は4 - 6月。私が二つの株を見比べる限り、実のつかない雄株の方が葉の色が濃く、雌株の葉の緑色は薄い。湾岸地域にはトベラが多く、そのトベラが今の季節になると、驚くような姿を見せる。その姿を見ていると、リンネの分類学の着眼点が植物の生殖とそのエロティシズムにあることを私は想起してしまう(*)。

 トベラの雌株につく実は果皮が3枚に割れて開き、中からたくさんの赤い種子が現れる。それが何とも生々しく、艶めかしい。赤い種子と緑色の葉との色のコントラストも実に鮮やか。種子はべたつく赤い粘液に被われていて、果皮の内側から出ている粘液は舐めても甘くない。赤い種子はメジロなどが食べるが、赤いのは表面だけで、中の大部分は白い胚乳。鳥たちはトベラの種子の見かけの容姿に騙され、トベラの戦略に操られているように見える。

チャールズ・ダーウィンの祖父エラズマス・ダーウィンロマン主義文学とリンネの植物学がミックスされた自著『植物の園(The Botanic Garden)』(1791)がエロティックだと批判されると、リンネの分類学の本質がエロティシズムにあると反論している。両性植物は花と実の両方で、動物への性的アピールを持っている。