トベラの赤い種子

 湾岸地域にはトベラが多い。目立たない脇役のトベラだが、そのトベラが今の季節になると、驚くような姿を見せる。それを見ると、リンネの分類学の本質は植物の持つエロティシズムにあることを思い出すのである。

 トベラの実は果皮が3枚に割れて開き、中からたくさんの赤い種子が現れる。それが何とも艶めかしい。赤い種子と緑色の葉との色のコントラストも鮮やかである。種子はべたつく粘液に被われているが、粘液は果皮の内側から出ていて、舐めても甘くない。赤い種子はメジロなどの鳥類が食べるが、甘くはなく、赤いのは表面だけで、中の大部分は白い胚乳。鳥たちはその見かけの容姿に騙され、操られているのかも知れない。