ベネディクトの『菊と刀』とエーコの『薔薇の名前』を混ぜ合わすなら、「菊と薔薇」とでもなるのだろうが、二つのテキストを比較できても、混ぜ合わすことなど当然できない。だが、二つの植物となると、どうだろうか。かつてはキクとバラは異なる本質をもった植物と考えられていたが、進化論や遺伝子工学の展開を通じて、植物は進化し、その遺伝子を操作することができるようになった。キクとバラは系統的に遠縁のため、直接の交雑はできないのだが、遺伝子組み換えによって、青いキクの花が生まれ、今世紀に入り、青いバラの花も誕生している。
ものを操作し、変えることができるという錬金術的な夢が生物学や医学を推進する力の一つになっていて、その結果として「菊と薔薇」の「と」がとれて、「菊薔薇」がいずれ生まれることになるだろう。とはいえ、こんな素人の夢は今のところ妄想に過ぎない。
*画像は紅白のバラとキク、そして黄色のキクとバラ