ナワシロイチゴの花

 ナワシロイチゴ(苗代苺)はバラ科キイチゴ属の植物で、サツキイシゴ、ワセイチゴなどの別名がある。日本、朝鮮半島、中国などに分布するイチゴ。ナワシロイチゴの茎や葉柄にはトゲがたくさんあり、このトゲを使って、周囲の植物に絡みつき成長していく。いわゆるイチゴとは違って、随分と地味で貧相、目立たないイチゴである。

 ナワシロイチゴは5月から6月に、小さなピンク色の花を咲かせる(画像)。5枚の花弁の長さは5ミリから8ミリほど。開花しても花弁は開かないのが大きな特徴。萼片は花弁と同じ5枚で、花期になると、萼片が大きく広がる(画像)。よく見ると花の先はおちょぼ口になっていて、そこから雌しべの柱頭だけが顔を出している(画像)。

 これでは蜜が吸えないと心配するが、花弁と花弁の隙間から長い口吻を差し込んで蜜を吸うガや、花弁をこじ開けて蜜を吸うミツバチなどがいる。やがて花弁は剥がれ落ち、雄しべが現れる頃には雌しべは受粉を終えているから、花弁が開かないのは自家受粉しないためなのかも知れない。