花菖蒲(ハナショウブ)、菖蒲(アヤメ)、杜若(カキツバタ)の違いはよく話題になるが、ジャーマンアイリス(ドイツアヤメ)はレインボーフラワーとも呼ばれるように、色とりどりの花を咲かせ、アイリスの仲間では最も華やかで、非常に多くの品種がある。その花が今年も咲き出している。ヨーロッパに野生する自然交雑種ゲルマニカをもとにして、他のいくつかの原種も取り入れて交配育成が行われた。単色のものの他に、上の弁と下の弁で色が異なるものも多く、花の姿はドレスをまとったようで、香りもある。草丈1mぐらいの高性種から10~20cmのミニタイプまで、大きさも様々。
ドイツアヤメを光琳や抱一、あるいは琳派の画家が描いたらどうなるのか、つい妄想してしまう。「燕子花図(かきつばたず)」(根津美術館蔵)は群青、群緑、金の3色のみでカキツバタを大胆に描いた光琳の傑作。その後に続編ともいえる「八橋図」(メトロポリタン美術館蔵)を描いている。そして、約100年後、酒井抱一がそれを原案にした「八橋図」(出光美術館蔵)を描く。琳派の画家でも、ひょっとするとドイツアヤメを嫌って、描かない人がいたかもしれない。それなら、その理由もまた知りたくなる。