良く晴れた午後、ヤマブドウの紅葉に陽が当たり、眩しそうに眺めていると、横を通った私と同年配の女性が、「それは何ですか」と尋ねてきました。黒く熟したブドウの実を示しながら、「ヤマブドウです。食べられますよ」と言うと、彼女は何の躊躇もなく、一粒口に入れました。「あら、甘い」と私に言い、会釈してそのまま去って行ったのですが、その様子がとてものびやかで、きっぱりしたひと時でした。
日本の野生ブドウの代表がヤマブドウ。秋に熟す酸っぱい実は生食できるほか、ジャム、ワインの醸造にも使われます。ヤマブドウは雌雄異株で、雌株だけが実をつけます。ヤマブドウと栽培ブドウの違いは、前者が雌雄異株、後者が雌雄同株。セスから、ヤマブドウからワインを造ろうと思うなら、雄株と雌株の両方を植えなければなりません。
子供の頃の私の記憶の中にヤマブドウはありません。栗や柿に比べると、心がときめくようなものではなかったのでしょう。そのためか、今でもヤマブドウのワインを飲みたいとは思いません。飲めばうまいのかも知れないのですが…
*最後の画像はまだ青いヤマブドウ