2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

中高生のための哲学入門(10)

変化の歴史(6) (アリストテレスの科学とその方法) アリストテレスの経験科学に対する態度はプラトンとはっきり違っています。人間がもつ最高能力は理性であり、その活動は観想(speculation)だという点では二人は同じです。でも、アリストテレスは「第…

コメツブツメクサとネジバナ

コメツブツメクサはヨーロッパ〜西アジア原産の帰化植物で、道ばたや河原などに群生。今頃あちこちで黄色い花をつけている。茎はよく分枝し、葉は3小葉からなり、葉柄は長さ2〜5mmと短い。花序は直径7mmほど。花は黄色で、長さ3〜4mmと小さく、5〜20個が球状…

表情や動作から感情を学ぶこと

私たちの原始的な、生の感情に形を与えるのは表情や身体動作であり、その結果私たちがもつ怒りや悲しみは感情の形式の表現として(私たちの心の中に)存在することになります。「怒り」という感情は、怒っている人間の表情や声の出し方や身ぶりを模倣するこ…

中高生のための哲学入門(9)

変化の歴史(5) プラトンの哲学 自然主義的な好奇心の次に登場するのはそのような研究の結果である知識や、それを表現する方法に関する好奇心です。その結果、実在、信念、方法等が自然主義的だけでない仕方で考察されることになります。 [ソクラテス] ソ…

似ている、似ていない(6)

このシリーズの6月10日の(2)で、アレチハナガサ、ダキバアレチノハナガサ、ヤナギハナガサに言及し、ヤナギハナガサを実際に観察しておらず、画像も?のついたものだった。だが、偶然にもヤナギハナガサを実際に見ることができ、2日の画像はダキバであるこ…

中高生のための哲学入門(8)

変化の歴史(4) [原子論] 原子論(atomism)はレウキッポスとその弟子デモクリトスによって考えられました。デモクリトスは紀元前460年生まれなので、ソクラテスより10歳若いことになります。彼の主張によれば、原子は不可分で、その部分の間に差はなく、…

似ているもの、似ていないもの(5)

今日の話題は白い植物。白装束が尋常でない服装であるのに似て、白い葉や茎となると白い花とは違って、気味の悪さを覚える人が少なからずいる筈である。 最近の公園ではよくシロタエギク(白妙菊)を見る。全身が白く、黄色の花をつけている。シロタエギクは…

中高生のための哲学入門(7)

変化の歴史(3) [ゼノンのパラドクス] ゼノンは師パルメニデスの不変の哲学を擁護するために変化に関わる多くのパラドクスを考えています。いずれも「この世界に運動変化が存在するとすれば、矛盾が生まれる、それゆえ、運動は存在しない」というパラドク…

似ている、似ていない(4)

夏休みの早朝、畑にキュウリを採りに行き、朝露の中のツユクサに眼が惹きつけられ、意識の中に直接に色が飛び込んできて、すっかり目が覚めたような経験をしたのを今でも憶えている。確か小学校の3年生の頃か。そのためなのだろう、今でもツユクサが眼に入る…

中高生のための哲学入門(6)

変化の歴史(2) [変化の自然主義的説明] 哲学史ではターレスの名前がいつも最初に出てくるのですが、アリストテレスは、彼が「水がすべてのものの起源(アルケー)である」(『形而上学』、983b18)と主張した、と述べています。彼の理論は一般的で、観察…

人間の能動性

最近の知覚心理学の研究によれば、正常な状況なら視覚系は外界の情報を正確に受け取るのですが、そうでないと、曖昧な結果をもたらすことが多くあり、「多義図形」はそのような結果の一つです。アトニーブの三角形を眺めていると、最初すべての三角形がある…

似ている、似ていない(3)

梅雨に入り、あちこちにヒルガオが花をつけている。それと共にアサガオも咲き出した。近くに整備されたばかりの広場があり、広い斜面に植えられたペチュニアが咲き誇っている。ヒルガオ、アサガオ、ペチュニアはどれもよく似ている。どこが違うのかと問われ…

因果の世界=物語の世界=縁起の世界

因果性(causation)は人間が太古より変化を捉える原理、あるいは前提になってきました。神話や物語は因果性に基づいて構成されています。後世のアリストテレスの4原因説も因果的世界観の要約のようなものです。これは仏教世界でも同じで、「縁起の法」と呼…

中高生のための哲学入門(5)

変化の歴史(1) ギリシャ哲学から経験科学へ ギリシャ哲学は一見すると科学哲学(philosophy of science)とは何の関係もないどころか、科学哲学の研究にはそれが思弁だけからなるゆえに何の貢献もしないとさえ考えられてきました。というのも、経験を重視…

紫陽花の季節

梅雨に入ると、多くの人がアジサイを連想する。スミダノハナビ(隅田の花火)、アナベル、カシワバアジサイ(柏葉紫陽花)など…「隅田の花火」の特徴は、周りの装飾花が八重になっていて、白から次第に青色がほのかに入り、花火のように星形の花が飛び出すよ…

「何を、いつ、どこで」見るのか、そして、考えるのか?

見るのは「今、ここで」なされるが、考えるのは「いつか、どこか」でも構わない。直接的な感覚経験と知識や意識の経験との違いがここに端的に表れている。これは直接経験と経験についての経験の違いでもある。 私が見ているもの、意識しているもの <視覚の…

中高生のための哲学入門(4)

アリストテレスの論理学は自然言語(natural language、彼にはギリシャ語、私たちには日本語)の文法に基づいており、それゆえ、基本の言明の形は「AはBである」という、AとBの二つの名辞(term、項)が「である」で結ばれた形です。自然言語の文法上の主語…

夏を感じるナツツバキ

ナツツバキ(夏椿)はツバキ科ナツツバキ属の落葉樹。花の形が椿によく似ていて、夏に開花することから「夏椿」。別名はシャラノキ(娑羅樹)で、仏衣の襞のような花弁で、寺によく植えられてきた。だが、釈迦が涅槃に入った時の「沙羅双樹(さらそうじゅ)…

中高生のための哲学入門(3)

アリストテレスの論理学のシステムに続いて、彼の正常モデル(normal model)について考えてみましょう。「正常」の反対語は「異常」で、今でも私たちの日常生活では頻繁に使われています。その用法の出発点にあるのがアリストテレスの正常モデルの考えなの…

クチナシとヤグルマギク

クチナシは遠目には好きなのだが、細密画を描こうと近づくと、次第に異様な印象が強くなってくる。軟体のようで、私には不思議な花である。遠目もズームアップもほぼ変わらないのが、例えばヤグルマギクで、私には安心してその形の幾何学を考えることができ…

なぜ誰もが「故郷」に執心するのか(越後に生まれた人たちの答え)

なぜ私たちは故郷に執着し、特別の愛着をもつのか。誰もが必ず持つ問いである。私のように若い頃は閉鎖的で、退屈な故郷が嫌いだった者でも、歳をとると懐かしくなってくる。何とも人の気持ちはいい加減なもの。 故郷が好きであれ、嫌いであれ、とにかく故郷…

中高生のための哲学入門(2)

アリストテレスの推論についての理論:三段論法(Syllogism) アリストテレスは桁外れの天才、それも万能の天才です。そんな大天才でも先生のプラトンや生徒のアレキサンダー大王とは色々と確執があったようです。その天才の業績の一つが論理学であり、何と…

好きになれないノウゼンカズラ

ノウゼンカズラ(凌霄花)はノウゼンカズラ科の蔓性の木で、夏から秋にかけてオレンジ、あるいは赤の花をつける。暑くなるのに合わせて、人の目を引く濃いオレンジ色の花を咲かせる。私の周りでもノウゼンカズラの花が咲き出した。だが、私はこの花が苦手で…

中高生のための哲学入門(1)

中学生と高校生向けの哲学シリーズで、わかりやすく知識や行為について議論していきたいと思います。哲学こそが古代ギリシャから人の知識を生み出してきました。学校で習う事柄の背後にある基本的な問題を中心に説明し、知ること、行為することの面白さ、大…

似ている、似ていない(2)

車道や歩道の脇に、それもアスファルトの欠けた僅かな所を好むかのように生育するのがヤナギハナガサやアレチノハナガサ。ヤナギハナガサは南アメリカ原産の多年草。第二次世界大戦後、東海地方で帰化が知られ、現在では全国的に市街地の道ばたなどに見られ…

日常世界の不思議

「予兆、吉兆、凶兆、正夢、逆夢」といった一連の言葉は未来や未知のものへの不安、期待を表していて、今でも立派に現役の語彙として使われています。「流れ星」、「笹の花」などはその具体的な指示対象であり、凶兆のシンボルとなってきました。これら言葉…

素面で退屈するか、それとも酔って驚くか、あなたならいずれを選ぶか?

(哲学的なSFと言えば聞こえがいいが、酔っ払いの戯言に過ぎないのかも…) 『旧約聖書』の伝道の書1:9に「日の下には新しいものはない」と記されている。これを古典的世界を暗示する表現だとすれば、常識的で、月並みで、平凡な世界、それが「古典的世界観…

テイカカズラ(定家葛)

テイカカズラはキョウチクトウ科テイカカズラ属の有毒植物。6月頃に開花と言われるが、湾岸地域では既にあちこちで花を咲かせ、終わりに近づいている。花ははじめ白く、次第に淡黄色になり、ジャスミンに似た香りがある。花は7月頃いったん途絶えるが、その…

生物多様性についての問題と解答例

「生物多様性(biodiversity)を守ることが生態系を持続可能にする鍵だとすれば、一つの社会で人種の多様性(racial diversity)を守ることがその社会を持続させる鍵である。」という言明が真かどうか答えなさい。 この言明はif thenの形の条件法の文になっ…

似ている、似ていない(1)

「似て非なる」、「似ている」、「違う」、そして、「同じ」といった表現を植物を例にして考えてみたいのだが、そんな小難しい話は後に譲り、まずはワルナスビとイヌホオズキ。どちらもナス科ナス属なのでナスの花や実に似ていて、私など子供の頃よく見た畑…