ノウゼンカズラ(凌霄花)はノウゼンカズラ科の蔓性の木で、夏から秋にかけてオレンジ、あるいは赤の花をつける。暑くなるのに合わせて、人の目を引く濃いオレンジ色の花を咲かせる。私の周りでもノウゼンカズラの花が咲き出した。だが、私はこの花が苦手で、どうしても好きになれないのである。「花は見られるためにあるのだから、見るものに嫌われてはならない」という理屈は間違っていないのだが、それに反対したくなるのは私だけではあるまい。とはいえ、私に嫌われても、ノウゼンカズラは一向に困らないのだ。
から年)に「乃宇世宇(のうせう)」の名が見られるほどで、9世紀ごろに渡来した。古くから薬として使われていた。「凌霄花」は漢名からで、「凌」は「しのぐ」、 「霄」は「そら」の意味で、蔓が木にまといつき、天空を凌ぐほど高く登るところから、この名がついた。そんな由緒ある木が嫌いではあるが、夏の青空に伸びる花は見事である。
凌霄やギリシャに母を殺めたる 矢島渚男
(作者もこの花が好きではなく、この花から古代ギリシャのアガメムノン王一族の悲劇を想起し、トロイ遠征中の夫を裏切った王妃クリュタイムネストラを息子と娘が殺したことが句になっている。血の色のような赤の花色がそんな連想の原因だったのだろう。)
私もこれに似て、ノウゼンカズラの花の赤が暖かい赤ではなく、不吉な赤に結びついてしまうのである。だが、それが別の華やかなものを連想させるという句もある。
凌霄は妻恋ふ真昼のシャンデリア 中村草田男
近年、よく栽培されている近縁種がアメリカノウゼンカズラとアイノコノウゼンカズラ。アメリカノウゼンカズラは花の赤みが濃く、筒部が長く、トランペットの広がりが小さいので、別名コノウゼンカズラとも呼ばれている。北アメリカ原産で、ケンタッキー州の州花。画像はこれかも知れない。ノウゼンカズラの萼は緑色で、切れ込みが深く、長いのが特徴。それに対し、アメリカノウゼンカズラの萼は橙色から赤色で、切れ込みが浅く、短いのが特徴、またアイノコノウゼンカズラは両者の特徴を持ち、萼の切れ込みはノウゼンカズラ同様に深く、そして長いのだが、色は淡い橙色をしている。となると、画像はアイノコノウゼンカズラのようだ。