似ているもの、似ていないもの(5)

 今日の話題は白い植物。白装束が尋常でない服装であるのに似て、白い葉や茎となると白い花とは違って、気味の悪さを覚える人が少なからずいる筈である。

 最近の公園ではよくシロタエギク(白妙菊)を見る。全身が白く、黄色の花をつけている。シロタエギクはキク科キオン属で、英語ではdusty miller(粉まみれの製粉屋)。原産地は地中海、草丈50~100cmくらいになり、茎の下部は木質化する。葉は羽状の切れ込みがあり、茎や葉は緑だが、白い繊毛に覆われ、白銀色に見える。6、7月頃に黄色い花が開花する。葉や茎の表面の白い毛は表皮細胞に由来し、光合成には邪魔だが、乾燥を防いだり、朝霧を毛で集めたりする役割を持っていたものと思われる。
 次は夏に爽快な印象を与える白で、それがハツユキソウ(初雪草)。葉が白く色づき、夏なのになぜかハツユキソウポインセチアの仲間で、ポインセチアと同じように主に葉を観賞する植物。暑くなる夏に緑の葉の縁が白く色づき、視覚的に涼しさを演出してくれる。葉が白くなるのとほぼ同じ頃に白い小さな花を茎頂に咲かせるが、花は注意して見ないとわからない。

 そして、最後がハンゲショウ半夏生)。雑節の半夏生の頃(今年は7月1日)に花を咲かせるのでこの名がついた。花が咲くと、花近くの葉の上面が真っ白に染まる。葉の片面だけが白くなるので半化粧、あるいは片白草(カタシロクサ)とも呼ばれる。花は目立たなく地味なもので、葉が白くなるのは、地味な花を補い、受粉のための昆虫を集めるため。これはハツユキソウにも言える。

 不気味なシロタエギク、幽玄なハンゲショウ、清々しいハツユキソウと、私の印象は随分と異なる。だが、それぞれがもつ白さに関する適応物語は何ともお決まりで面白みがない。そのためか、それぞれにロマンティックな名前をつけて、心ときめく物語をそれぞれ創作したくなるのもわかるというもの。適応物語は似たりよったりでも、創作された物語は似ていない。

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シロタエギク

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シロタエギク

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ハツユキソウ

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ハツユキソウ

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ハンゲショウ

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ハンゲショウ