2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

アウグスティヌスの時間(1)

「時間とは何か」を考える際、アウグスティヌスの考えが必ず必ず取り上げられる。彼の時間についての発想や理解の仕方が現代の私たちの考えに相通じるものがあるからである。アウグスティヌスが時間について現代的な考えをもっていたことは、次の二つのよく…

ハナミズキ(花水木)とヤマボウシ (山法師)

湾岸地域にはハナミズキとヤマボウシが多い。共にミズキ科 ヤマボウシ属の落葉高木。 よく似た花をつけるが、花期は4~5月がハナミズキ、5~6月がヤマボウシである。ヤマボウシは日本原産で、「山法師」という名はその特徴のある花序を「山伏」の頭巾に見立…

途方もない原子の数

大きな数となれば、宇宙の星の数、地表の砂粒の数など様々。その一つが原子の数。その数が途方もなく大きいことが何を意味するか考えてみよう。 物質は幾つの原子からできているか?アボガドロ数がその目安となる。水1モルの分子を1 列に並べるとどのくらい…

モッコクとマサキ:目立たない花

モッコクは関東以西の本州を原産とするツバキ科モッコク属の常緑樹で、主に太平洋岸の林に自生する。樹齢を経るに従って樹姿に風格が出ることから、「庭木の王」とされた。「江戸五木」の一つで、江戸時代の庭造りでは重宝された(他の江戸五木:マキ、アカ…

意識と老化(老化の意識、意識の老化)

いつまでが成長で、いつからが老化なのか判然としないが、心身の能力や機能にはピークの時期があり、それが過ぎると老化、劣化ということになっているようである。これは人間だけではなく、生き物に共通する特徴のように思われる。私のように70歳を越えると…

アメリカデイゴ(海紅豆(かいこうず))

アメリカデイゴの赤い花が眩しい。今が開花時期で、8月上旬頃、新枝の先から再度少し花をつける。夏らしい、真っ赤な花で、暖かい地域に植えられている。南アメリカ原産で、渡来したのは江戸時代末期。日本では庭木として人気がある。鹿児島県の県木、アルゼ…

物質、エネルギー、情報という概念の成り立ち

<「物質」概念の成立> この世界をつくっているのは物質。現在では自明の、この理解がいつ頃生まれたかは先史時代までは遡れない。それは、「物は何からできているか」という問いの答として考え出された概念だからである。「物、物質」という抽象概念自体が…

中高生のための哲学入門(18)

生命の変化(3) (定義) (遺伝子によって表現される)ある形質に関して、集団が下の条件を満たすが場合、その集団はハーディ-ワインバーグ均衡にあると言われます。 1集団のサイズは無限である。(実際に無限の集団はないので、通常は極めて大きな集団と…

ナンキンハゼの花の魅力

本田さんが私の引用した図鑑の説明を示す画像を送ってくださった。そこで、再度ナンキンハゼの花を見直してみると、花の周りに実に多くの生き物が見つかった。ハチやテントウムシに随分と好かれているようだ。ナンキンハゼは6~7月に枝先に総状花序を出し、…

ナンキンハゼの花の魅力

本田さんが私の引用した図鑑の説明を示す画像を送ってくださった。そこで、再度ナンキンハゼの花を見直してみると、花の周りに実に多くの生き物が見つかった。ハチやテントウムシに随分と好かれているようだ。ナンキンハゼは6~7月に枝先に総状花序を出し、…

因果律が成立しない反実在論的な量子力学の世界

20世紀に入るやアインシュタインが相対性理論を発表し、量子力学が登場し、物理学が大きく変貌します。量子力学は、自然界のエネルギー、例えば原子のエネルギーが連続ではなく、とびとびの値しかとらないことを主張し、それが半導体技術などに応用され、私…

中高生のための哲学入門(17)

生命の変化(2) 情報とDNA分子 以下のような文を見て気づくことを挙げてみるように言われたら、何を挙げるでしょうか。また、それぞれの文に現われる情報に関連した用語を使わずに、同じ内容を表現できるでしょうか。 遺伝するのは親から子へ物理的に引き継…

ナンキンハゼの黄色い花

ナンキンハゼは中国の中南部を原産地とし、種から蝋を採る有用樹として江戸時代に長崎を経由して日本に持ち込まれた。「ハゼ」という名はついているが、ウルシ科のハゼとは別もので、樹液に触れてもかぶれることはない。ハゼと同じように蝋が採取できる中国…

量子力学の数学:ベクトル公理化の少々退屈な歴史的経緯

19世紀中葉にベクトルの数学的基礎をつくったのはハミルトンやグラスマン。グラスマンは「n 次元ユークリッド空間」について研究し、19 世紀末にはペアノがベクトルの抽象的な定義を与えている。ペアノは、1888 年に刊行した『幾何学的算術』で、多項式から…

中高生のための哲学入門(16)

生命の変化(1) ‘Nothing in biology makes sense except in the light of evolution’. Dobzhansky(1973) 物理学が20世紀前半に大きく進展したのに対し、20世紀後半に著しい発展を遂げたのが生物学です。それに伴い、現在では生物学の哲学も物理学の哲学…

ヤブガラシの企み

ビンボウカズラ(貧乏葛)とも呼ばれ、いずれの名前からしても強烈な繁殖力が想像できる。私が住む湾岸地域でもあちこちで蔓延っている。そのヤブガラシが今花盛り。花は散房状の集散花序と呼ばれ、主軸の先端に花がつき、下から横枝が出て、その先から花が…

「現在」とは何なのか

「現在(present)」とは言わずと知れた「今(now)」のことだが、「今」はわかったようでわからない不思議概念の一つ。「今」は今しかなく、一瞬でしかないと思われている。一瞬の出来事と言えば、夏なら流れ星や花火が思い浮かぶ。「今」も「一瞬」も文字…

中高生のための哲学入門(15)

変化の歴史(11) [ラマルクの進化論] 1801年からラマルク(Jean Baptiste Pierre Antoine de Monet, Chevalier de Lamarck, 1744-1829)は進化理論の詳細について発表し始めます。ビュフォンが既に生物の進化の可能性を示唆していましたが、彼は進化のメ…

セイヨウノコギリソウ(西洋鋸草、Achillea millefolium L.)

アジサイと同じように美しい集合花がある。ヤロウという英語名で呼ばれるセイヨウノコギリソウは、ヨーロッパ原産のキク科ノコギリソウ属の多年草。空地、道端、野原などによく自生している。花期は夏で、小さな花が固まって咲く。頭状花は直径3〜5mmで、散…

時間も空間も実在しない

質量、電荷、エネルギーなどは物理量と呼ばれていますが、それらは物体に固有な属性、つまり、物体がもつ性質です。 一方、空間や時間は物理学者が自然現象を理解し、表現するための概念であり、物理量のように自然界にそのまま実在しているものではなく、強…

中高生のための哲学入門(14)

変化の歴史(10) 生命科学:ギリシャからダーウィンまで [異なる形態を生み出す進化] ギリシャの哲学者アナクシマンドロスは地球が歴史的に変化してきており、それに応じて地上の生命も多くの異なる形態をとったと主張しました。例えば、陸地がない初期の…

君はアジサイのどの花を見ているのか?

私のアジサイに対する好みも世の流行に従ったままで、ガクアジサイが好きだというのも最近の好みの変化に追随しているだけのこと。そんな私はアジサイの何をどれだけ知っているのか。そこでタイトルの「君はアジサイのどの花を見ているのか」となる。生活世…

中高生のための哲学入門(13)

変化の歴史(9) [ガリレオ(Galileo Galilei, 1564-1642)] ガリレオの天体観測によって、天体が完全で不変の実体からできているのではないことが次第に明らかになっていきます。特に、ガリレオはコペルニクスの仮説を観測で験証することによって、地球も…

シルバーリーフと頭状花

妙な取り合わせのタイトルですが、白っぽい色の葉を持つ植物がシルバーリーフと呼ばれています。既にシロタエギクを紹介し、白い葉のハンゲショウも紹介しました。また、昨日述べたのですが、集合して一つに見える花が頭状花です(この頭状花はさらに次の三…

雲の形状は虚勢を張っているのか?

梅雨に入り、雲が目につく日々。今日も空には雲が広がっています。雲は水蒸気、氷山は氷塊であるにもかかわらず、それらの形状は私たちの心を動揺させ、喜ばせ、悲しませます。自然の風景には私たちを挑発し、高揚させ、落胆させるものが実に多くあり、しば…

中高生のための哲学入門(12)

変化の歴史(8) アリストテレス、プトレマイオス、ビュリダン アリストテレスは天体の運動を支配する法則と地上の運動を支配する法則は異なると考えたのですが、ガリレオはそのような区別をしませんでした。彼の慣性概念はアリストテレスの運動の考えと全く…

「花とは何か」

「色とは何か」と「これは何色か」の違いは何か、となれば、いかにも哲学的な問いのように響きます。一方、「人は顔色ばかり見て、本性は見ないものだ」と「素人は花ばかり見て、その植物全体を見ないものだ」となれば、花だけ愛でる人への警告にも聞こえま…

子供は物語を紡ぎ、自由にその物語を面白くする

既成の知識や情報を駆使することによって好奇心を満たす術を小児はまだもっていません。小児が知りたいと思うのは「知りたいものについての知識」ではなく、「知りたいものの物語」です。それが科学であろうと、文学であろうと、また遊びであろうと、「それ…

中高生のための哲学入門(11)

変化の歴史(7) (アリストテレスと生物学) 現代の生物学者、そして科学者がアリストテレス的科学を受け入れない理由となれば、多くの点で彼が誤っていたからです。ルネッサンスを通じて、アリストテレスの多くの理論が再吟味されました。例えば、アリスト…

ブッドレアとチョウ

ブッドレアはフジウツギ属で、その花が美しいので園芸用に人気が高い。世界に100種ほどあり、ほとんどは常緑または落葉性の低木だが、一部に高さ30mに及ぶ高木、そして草本もある。花の多くは芳香があり、また蜜が多いのでチョウが吸蜜に訪れる(画像)。そ…