シコンノボタンの「紫紺」

 「シコンノボタン」とは「紫紺の牡丹」ではなく、「紫紺野牡丹」。明大のスクールカラーである紫紺(しこん)は、紺色がかった暗めの紫色。その紫色は幅があり、京紫から江戸紫までを優に含み、しかも変化する。シコンノボタンはノボタン科の常緑低木で、その花色は独特である(画像参照)。

*1915(大正4)年明大は聖徳太子が定めた「冠位十二階制」の最上位色である「深紫」を校旗の色に採用したが、時代を経て、いつしか「紫紺」と称され、校旗と共に明大のスクールカラーとして定着した。

 中南米原産のシコンノボタンは紫紺色の大輪の花が美しく、いつまで見ていても見飽きない妖艶な雰囲気の花。色と形が一緒になって眼に飛び込んできて、美を享楽する時間を与えてくれる。私は一輪のシコンノボタンの花の見事さに惚れ惚れするのだが、それが木全体に満開となると、少々印象が違ってくる。画像のようにうるさい程に花が多いと、一輪の妖しさは消えてしまうが、集団の美が新しく生まれてくる。何とも贅沢なことである。

**「深紫」は日本古代の代表的な色彩で、「ふかむらさき、こきむらさき、こきいろ(濃色)」と呼ばれる。シコンノボタンは古代風には「こきいろのぼたん」とでもなるのだろう。ところで、春の高校野球の優勝旗は「紫紺の大優勝旗」。上記の通り、紫紺という色名は随分新しく、本来は「紫根」だったが、それが「紫紺」になったという説もある。