シシユズの実

 私がまだ子供の頃、親戚の家が西条にあり、西条は柳田などと並んで、「新井の在」だという言い回しが妙に子供の私の耳に残っています。在の西条の親戚の家に大きな柚子の木があり、沢山の柚子がなっていました。それは私には印象的な光景で、そのためか、今でもよく憶えています。在の農家は新井の街中の家とは違っていて、それも脳裏に刻み込まれています。妙高市の中の新井は杓子定規には「在郷町」と呼ばれるのでしょう。と言うのも、城下町、宿場町、門前町ではなく、農家と農産物の集積の町で、幾つもの在をもっていたからです。

 さて、肝心の柚子は大木になり、果実は比較的大きく、果皮の表面はでこぼこしています。種子が多く、酸味、香りが強く、ミカン属の中でもっとも耐寒性が強く、他の柑橘類より手がかかりません。 成長が遅く、「桃栗3年柿8年、柚子の大馬鹿18年」などと呼ばれてきました。海外でも「ユズ」と呼ばれています。ユズの原産地は中国の揚子江上流とされています。

 画像はシシユズ(獅子柚子)で、実はブンタン(文旦)の亜種。奈良時代に日本に渡来。画像の姿はまさに「獅子」のようなイカツイ顔立ちで、グロテスクでさえあります。シシユズはユズではなくブンタンの仲間なので、ユズのような強い香りは無く、ほのかに柑橘類の香りがするだけです。シシユズの実は大きく、直径20㎝前後にもなります。表皮と果肉の間にはブンタンと同じように厚く白い綿が詰まっています。

*画像は最初が現在のシシユズで、次第に秋が深まり、色づきます。