コガネグモの謎

 「くものぼせ」というタイトルのテレビ番組をみた。鹿児島県加治木町くも合戦で、「くものぼせ」の「のぼせ」とはわき目もふらず熱狂することで、コガネグモの相撲に夢中になる大人たちの物語である。毎年6月に開催されるコガネグモ同士が戦う相撲合戦に参加するコガネグモは全て雌(雄は雌よりずっと小さい)で、脚が長く、産卵直後のクモが強いとされている。

 哺乳類は雄が雌より大きく、強いのが普通だが、コガネグモジョロウグモの雄は雌に比べてはるかに小さい。コガネグモの雄は触肢という生殖器官を2本持ち、1回の生殖行為に触肢1本が必要であるため、最大2回しか交尾できない。その上、コガネグモの雌は交尾が10秒以上かかると、自分よりもはるかに小さい雄を食べてしまう。では、どうしてこのような理不尽に見える共食いの仕組みが維持されてきたのか。

 血縁関係のある雌の場合と血縁関係のない雌の場合について、雄とペアを組ませる実験をしてみた。その結果、血縁関係にある雌とペアを組んだ雄は、交尾を短時間で終え、共食いを避けた結果となった。一方、血縁関係のない雌とのペアは、交尾に時間がかかり、雌に食べられることとなった。この結果、雄がその後、血縁関係にある雌と交尾することがなくなるため、近親交配のリスクがなくなることになる。つまり、コガネグモは、健康で生存率が高い子孫を残すために、性的共食いを行っていることになる。この説明ですっかり納得という人は少なくても、数字の辻褄は合っている。

 また、スペインの進化生物学者のチームは色んなクモを風洞の中に置き、「橋を架ける」能力を調べた。つまり、糸を送り出し、風に乗せて別の地点に着地させ、そこへと渡る技能がどれだけあるか調べた。その結果、クモは小さい方がより頻繁に架橋を行ない、性別によってサイズが明確に異なるクモでは架橋行動がより頻繁であることがわかった。架橋が移動手段として一般的である種においては、小さなオスは架橋をより効率的に行なうことで交尾の機会が多くなり、受け入れてくれるメスにたどり着きやすい。これが、オスが小さくなる理由の一つである。この説明も説得力抜群とはいかないが、ある程度は頷ける。

ジョロウグモは秋を代表するクモで、コガネグモと同じように体長が雌雄でまるで違います。雌は35ミリで、腹部は太くて長く、青色と黄色の幅広い横縞があり、腹端が赤くなり、色鮮やかです。でも、雄は7~8ミリほどしかなく、目立ちません。すると、上のようなコガネグモについての適応物語が同じように適用できるのではないかと誰もが想像します。性的共食い、架橋能力について適用できそうに見えます。

コガネグモ

コガネグモ

ジョロウグモ