エノキの赤い実

 エノキは北海道を除く日本各地に自生するアサ科の落葉樹。山地や雑木林の縁、川沿いなどで普通に見られる木で、ケヤキやムクノキなどと共に各地の一里塚や神社仏閣に植えられ、その巨木が今日でも見られる。湾岸地域でもあちこちに植えられている。

 エノキという名の由来は諸説あるが、秋にできる赤い実は小鳥や森の生き物に人気が高く、「餌の木」からエノキとなったという説がある。まだ暑いが、エノキの実は色づき、秋を教えている。

 国蝶のオオムラサキゴマダラチョウ、テングチョウなどはエノキの葉を食べて育ち、葉裏でサナギとなる。エノキは人間の食糧ともなり、かつてエノキの若菜を米と一緒に炊き込んで「糧飯(カテメシ)」として食べたようだが、私は未経験である。今の私たちには株元や枯れ枝にできるエノキダケの方が知られている。

 エノキの開花は4-5月。雌雄同株で花には雌雄(あるいは両性花)あるが、いずれも緑色の小さな花であまり目立たない。雌花(両性花)の後に丸い果実ができ、9-10月に熟す。果皮には干し柿のような甘味があり、昔の子供はおやつにしたが、私には食べた記憶がない。また、数多くの野鳥が果実を目当てに集まる。