ジンチョウゲの花

 中国南部が原産のジンチョウゲ沈丁花)は日本でも室町時代には既に栽培されていて、延徳二年(1490)の『尺素往来(せきそおうらい)』に「沈丁華」と記されている。雌雄異株だが、日本にある木はほとんどが雄株(*)。2月も末になり、湾岸地域でもあちこちで咲き始めている。

 花芽は前年の秋にはできているが、実際に咲き出すまでに寒い中、3ヶ月以上を花芽のまま過ごす。外側はピンクで内側は白い。外側も内側も白い種類はシロバナジンチョウゲと呼ばれ(最後の画像)、シロバナの開花の方が少し遅れるようである。

 香りは「沈香(じんこう)」に、葉の形が「丁子」に似ているところから、「沈丁花」になった。その香りは遠くにいても匂ってくる。名前の示すとおり沈香と丁字の香を併せもち、その鮮やかな匂いで 春の到来を告げる(沈丁花生死の境に薫じけり 渡辺水巴)。

*「雌雄異株で、日本には普通雄株のみがある」と言うのが普通の説明。確かに、ジンチョウゲは実ができず、実のなる木はごく少ない。実のつかない株の花にも実のつく株の花にも雄しべと雌しべがあり、形態的には立派な両性花である。中国ではジンチョウゲを両性花としている。だが、実のつく株とそうでない株があるため、日本では雌雄異株と言われてきた。