シキミの花

 シキミ(樒)はマツブサ科シキミ属の常緑小高木で、葉は厚くつやがあり、春に淡黄白色の花を咲かせる(画像)。秋から冬にかけてつける星型の実には毒成分が含まれます。そのため、「悪しき実」が「シキミ」の由来と言われています。

 仏事に用いるために寺院によく植えられていて、そのためか、漢字では「櫁」、「梻」とも書かれます。画像の花だけでなく、名前も字も神秘さが漂います。梻(しきみ)と榊(さかき)という漢字は、「仏」と「神」の違いを象徴しているように見え、シキミは冥界を暗示する植物に思われてなりません。

 実際、シキミは一般的な仏式葬儀でよく目にする植物です。一方のサカキはもっぱら神事に使われます。シキミは仏の世界(天竺)に蓮(ハス、青蓮華)と共に生えていると考えられていました。シキミを日本にもってきたのは鑑真だと言われています。毒性の強いシキミは強烈な香りを放ち、そのため、香りによって獣を遠ざけ、遺体の腐敗臭を消す役目も持っていました。

*仏教のシキミと神道のサカキはそれぞれの宗教で似た役割を持っていたようです。