ミヤマシキミの赤い実の謎

 ミヤマシキミはミカン科の常緑低木で、別名はシキミア(スキミア)。実の「赤」は葉の「緑」と補色の関係にあり、画像が示すように、鮮やかな色の組み合わせになっています。今年もまたミヤマシキミの実が真っ赤に変わり、鳥にも人の目にも目立ち、常緑樹の実が赤くなる理由がわかる気がします。 ミヤマシキミの葉は長さ10㎝ほどと大きめで、厚くて光沢があります。葉にはミカン科の特徴である油点が点在し、葉をちぎるとミカンのような香りがします。

 ところが、ミヤマシキミの赤くなった実も葉も実は有毒で、食べると激しい痙攣を起こします。そのためか、悪しき実の意味のアがとれて「シキミ」という名が付いたとも言われています。植物が作り出す「毒」は、動かない植物の数少ない身を守る方法です。鹿による食害が深刻な問題になっていますが、ミヤマシキミはその心配がなさそうです。

 でも、動けない植物が増えるには赤い実をつけて、動物に食べられることが必要です。その両方ともを見事に兼ね備えたのがミヤマシキミの実だと言いたくなるのですが、どのように「毒」と「赤色」が両立できているのか、私には謎のままです。

 有毒の葉や実は民間薬として頭痛やめまいなどに利用され、また農業用殺虫剤に使われてきました。薬、毒、赤色の実の組み合わせは正に謎の「調合」と言えます。