ミヤマシキミの謎の赤い実

 ミカン科のシキミに枝葉のつき方や見た目がよく似ていて、山地に自生することから、ミヤマ(深山)に育つシキミという意味でミヤマシキミと呼ばれるようになりました。雌雄異株のミヤマシキミの実は球形の核果で、秋に赤く熟します(画像)。ミヤマシキミの別名はシキミア(スキミア)、オクリョウ(億両)。10月頃に熟する赤い実はマンリョウなどと同様に、冬の庭園に彩を添えてきました。実の「赤」は葉の「緑」と補色の関係にあり、画像が示しているように、色の鮮やかな組み合わせになっています。鳥にも人の目にも目立ち、常緑樹の実が赤くなる理由がわかる気がします。

 ミヤマシキミの葉は長さ10㎝ほどと大きめで、厚くて光沢があります。葉にはミカン科の特徴である油点が点在し、葉をちぎるとミカンのような香りがします。ところが、ミヤマシキミの赤くなった実も葉もスキミアンというアルカロイドを含み、有毒で、食べると激しい痙攣を起こします。植物が作り出す「毒」は、動くことができない植物の数少ない身を守る方法。鹿による食害が深刻な問題になっていますが、ミヤマシキミは防御ができています。でも、動けない植物が移動し、増えるには赤い実をつけて、動物に食べられることが必要です。その両方ともを見事に兼ね備えたのがミヤマシキミの実だと言いたくなるのですが、どのように「毒」と「赤色」を両立させているのか。哺乳類には毒でも、鳥には毒ではないのか、謎は残ったままです。