「不如帰の花」とは解せない、というのが子規ファンの当然の反応かも知れません。また、多くの人は信長、秀吉、家康のホトトギスの句を思い出すことでしょう。でも、ホトトギスは鳥だけではなく、花の名前でもあるのです。
鳥のホトトギスはカッコウ科に分類され、「杜鵑、杜宇、蜀魂、不如帰、時鳥、子規、田鵑」などと、漢字表記のとても多い鳥です。ホトトギスは甲高い声で鋭く鳴き、口の中が赤く、「鳴いて血を吐く」と言われます。故事によれば、「不如帰去(帰り去くにしかず、帰る方がよい)」と嘆きながら、血を吐くまで鳴き続けました。
正岡子規は結核を患い、喀血した自分を「鳴いて血を吐くホトトギス」に重ね、ホトトギスの漢字表記の一つ「子規」を俳号としました。彼が創刊した俳句雑誌名『ホトトギス』もその俳号にちなんだものです。
鳥のホトトギスは夏の風物詩の代表とされ、古くから和歌に詠まれてきました。「郭公」は「かっこう」と読みますが、「ほととぎす」とも読めます。二つは違う鳥というのが現在の常識ですが、昔はホトトギスしか認識されていませんでした。徳冨蘆花の『不如帰』も「子規」も俳句雑誌の名前もみなホトトギスでした。
さて、ホトトギス属の植物は19種知られており、いずれも東アジアに生育。日本には12種分布しています。この分布の仕方から、日本はホトトギス属の分化の中心地と言えます。ホトトギスはユリ科の植物で、園芸種としても人気があり、白〜紫の花弁に濃い紫の小さい斑点がつきます(画像)。ホトトギスの開花時期は8月〜10月。
ホトトギスは「杜鵑草」のことで、紫色の斑点をもつ花が鳥のホトトギスの胸の斑点に似ていることから命名されました。「杜鵑草」はホトトギスですが、「杜鵑花」はサツキです。