素人判断

 昨年の夏にコガネムシ、カナブン、アオハナムグリシロテンハナムグリの記事を掲載したのだが、その時のコガネムシの画像は(より正確には)アオドウガネのようである。アオドウガネは緑のコガネムシとも呼ばれていて、素人の早とちりという訳でもないようなのだが、まずはちょっと不正確だったことをご容赦願いたい。

 昆虫の特定は観察の訓練を受けていない素人にはとても難しい。「ツヤツヤして全体に丸いのがコガネムシ、背中に大きな三角形があるのがカナブン、斑点模様があり毛で覆われているのがハナムグリ」と紹介し、それはそれで間違いではないのだが、ツヤツヤが足りないので、アオドウガネが正しいようだ。最近はドウガネブイブイが増えているようだが、これもカナブンと見分けるのが難しい(アオドウガネもドウガネブイブイも広義のコガネムシ)。また、背中のマークが三角形だとカナブン、半楕円形だとドウガネブイブイで、画像からの判定はカナブン。

 杓子定規には、コガネムシ科のスジコガネ亜科にアオドウガネ、ドウガネブイブイコガネムシがいて、ハナムグリ亜科にカナブン、アオヒメハナムグリアオハナムグリシロテンハナムグリがいる。そして、私など素人はドウガネ、コガネムシハナムグリ、カナブンと分けて捉え、それでほぼ支障はないのである。

 アオドウガネ(青銅鉦)は、街中でも見られる広義のコガネムシコガネムシに似ているが、胴体の一部が(光の当て具合で)赤銅色をしていて、胴体の端に長い毛がある。幼虫は地中の植物の根を食べ尽くし、成虫はくだものや野菜類、広葉樹の葉を食べる。草食の夜行性昆虫で、昼間は葉の裏などに隠れている。

 コガネムシ、アオドウガネとカナブンとは生態が違う。コガネムシ、アオドウガネの成虫は葉を食べるのに対し、カナブンは樹液を吸う。また、コガネムシ、アオドウガネの幼虫は植物の根を食べるのに対し、カナブンの幼虫は落ち葉を食べる。従って、コガネムシ、アオドウガネは害虫、カナブン、ハナムグリは益虫ということになる。

 観察したことは事実の筈なのだが、最も基本の名前の同定は観察の直接結果ではなく、幾つかの仮定や知識と、観察の積み重ねを含むもので、そのために自らの判断を含み、「観察結果を信じる」ことになる。これが素人の私の「観察」についての観察結果であり、客観的な観察とは「あり得ない理想」のように思えるのが、これまた素人の本性についての観察結果なのかも知れない。それにしても、げに恐ろしきは素人判断で、素人の観察結果は大いに修正可能なのである。

*画像は順にアオドウガネ、カナブン、アオハナムグリシロテンハナムグリである。

アオドウガネ

カナブン

アオハナムグリ

シロテンハナムグリ