民俗的な霊魂観

 どの宗教でも霊魂は重要な概念、事柄です。平田篤胤の『霊能真柱』には神道の霊魂観が登場しますが、客観的研究となると、折口信夫の霊の研究まで待たねばなりません。折口は神道の霊魂を表す宗教用語として、「かみ」、「たま」、「もの」の三つを挙げます。また、折口によれば、まれびと(稀人・客人)は、他の世界から来訪する霊のことです。常世は死霊の住む国であり、そこに人々を悪霊から護ってくれる祖先が住むと考えられていて、農民たちは毎年定期的に常世から祖霊がやってきて、人々を祝福してくれると信じるようになりました。その来臨が稀だったので、呼び名は「まれびと」となりました。今では仏教行事であるお盆も、このまれびと信仰が起源であるというのが折口の民俗学的な推定です。

 「宗教とは何か」を問い、宗教概念をはっきりさせようとすると、外来の宗教が不可欠です。キリスト教や仏教のような典型的な宗教、儒教道教のような倫理的な教えが私たちの過去に輸入され、それらが日本人の宗教観を形作ってきました。でも、神道は外来の宗教とは違い、日本固有の文化、習俗、そして自然観のようなものだというのが柳田や折口の民俗神道の考えで、それこそ神社神道の基本にあるものだと捉えられています。 

 *折口信夫「霊魂の話」インターネットの青空文庫、底本『折口信夫全集3』中央公論社、1995