小春日和の中のダマスクローズ

 歴史家ヘロドトスが「他のバラに優る芳香を放つ薔薇」と述べたダマスクローズは「ロサ・ダマスケナ(Rosa×damascena)」のこと。今はガリカ・ローズとロサ・フェニキア、あるいはロサ・モスカータとの交雑によって生まれたと推測されています。

 かつてユーラシア大陸に自生していたバラは、春に一度だけ咲く、一季咲きの花でした。バラの原種を遡れば、10種ほどだそうです。当時はバラの若芽や実を食用としたりしていました。1867年にフランスで「ラ・フランス」が誕生し、バラが一年中見られるようになりました。秋には、初夏の頃の花よりも少し小ぶりで濃い花色のバラが咲きます。

 ピンク色の花を咲かせるダマスクローズは古くから人々に愛され、ローズオイル、香水、アロマキャンドルなどとして利用されてきました。ダマスクローズは16世紀にシリアの首都ダマスカスから、ヨーロッパに持ち込まれ、そのため「ダマスカスからきたバラ」という意味で「ダマスクローズ」と名付けられました。

 そんなダマスクローズも4月に花をつけるだけでなく、今の季節にも花をつけます。小春日和の中、道端のダマスクローズが咲き始め、芳香を放ち始めました。