ネグンドカエデ ‘フラミンゴ’の先祖返り

 ネグンドカエデのフラミンゴ(Acer negundo 'Flamingo')の葉には白い斑が広く入り、ピンクを帯びて美しく、春の芽吹き、夏の涼しげな葉色、秋の紅葉と四季折々楽しめます。深い鋸歯の葉の外側に白く斑が入り、初めは赤みを帯びた若葉が、徐々に白からクリーム色に変化していきます。その原産地は北アメリカ。最初の二枚の画像からその見事な葉姿がわかります。

 ところが、次の二枚の画像を見て下さい。ネグンドカエデの木の一枝の葉がすべて緑で、いわば普通のカエデの葉になっています。ライオンの頭、蛇の尾、ヤギの胴をもち、口から火を吐くギリシャ神話の怪獣キマイラからキメラと呼ばれているのが、異なる遺伝子型の細胞が共存している状態の個体で、 植物では接ぎ木したものによく見られます。このキメラ状態のネグンドカエデは特段珍しいことではなく、園芸ではよく見られる「先祖返り」の例なのです。

 ネグンドカエデは太い幹を剪定したりすると、よく先祖返りが起こり、枝枯れした箇所を除去すると、新たに出た枝の葉がよく先祖返りするのです。すると、フラミンゴ本来の綺麗な斑入りの葉を持つ枝と、普通の緑の葉の枝とのキメラ状態になるのです。

*「先祖返り」は親に見られなかった、何代も前の先祖の性質が、子孫に現あらわれることです。人為的に、あるいは自然に交配し、変化した植物の形状が、元の状態に戻ることです。遺伝子の突然変異や品種間の交雑によって起こり、斑入り葉の斑が抜け、緑一色になる現象などが起きます。アベリアの白い斑が消えて緑だけの葉になってしまったり、白と赤の花が咲くツツジが白い花だけになってしまったりするのです。一度「先祖返り」した枝は元には戻らないので、切るしかありません。