花を哲学する(3)

 今流行りの「カラーリーフ」という呼び方を使うなら、花も葉もすべて含まれ、問題は何もなくなってしまいそうですが、このリーフを強調するような二つの例を挙げることができます。

 葉の色が緑色でなかったり、斑入りだったりする植物は意外に多く、観葉植物として好まれてきました。そんな植物の代表がハツユキソウ、そしてネグンドカエデです。「初雪草」とは何とも大正ロマン主義風で、竹久夢二を連想させる名前です。名前の由来は画像を見れば誰もが納得できる筈ですが、夏や秋に初雪とは季節感に大いにズレを感じるのも確かです。和名は、夏の花期になると頂部の葉が白く縁取りがされてよく目立ち、その姿は初雪をかぶった景色に見えることからつきました。緑の葉縁に白い覆輪が入った葉色が対照的で、それが魅力になっています。観賞価値はその花より圧倒的に葉にあります。北米が原産で、多くの園芸種があり、高さは1m程にもなります。

 ネグンドカエデも北米太平洋沿岸を原産とするカエデの仲間。欧米や中国北部で古くから街路樹として植栽されており、日本には1882年に渡来しました。北海道を中心として公園や街路に使われ、葉の形はカエデの仲間とは思えない羽根状で、トネリコに似ていて、昭和の頃まではトネリコバノカエデと呼ばれていました。樹液からシロップを採取するなど実用的に使われていましたが、雄大な樹形や変化に富む葉色に価値があるとして観賞用としても普及してきました。

 さて、広義のカラーリーフ(葉もどき、花もどき)の中でも花に見える植物となると、既に挙げたブーゲンビリアがその一例です。真っ赤な花のように見える部分は苞葉(ほうよう)と言って、つぼみを包むように変形していた葉です。つぼみが開花すると、苞葉は花の根元部分に残るので、大きな赤い花を咲かせているように見えます。

 大きな白い花が咲いているように見えるのが上述のハツユキソウ。よく見ると花弁に見える部分は、白く縁取られて変色した葉です。花はごくささやかに中央にある部分だけ。ポインセチアはクリスマスに欠かせない緑と真っ赤なコントラストが素敵な植物。真っ赤に染まっているのは、花ではなく苞葉。花は中央の黄色い部分です。

 最近よく見る淡いピンクと白の花が咲いているようなハツユキカズラも花ではありません。新葉が淡いピンク色で芽生え、成長するにつれ白になり、さらに緑の斑点が葉に浮かび、最終的に緑一色の葉になります。

 梅雨に入り、アジサイが輝きを増していますが、ガクアジサイも花びらのように見えるものが「萼(がく)」で、真ん中にぶつぶつして見えるのが本当の花です。萼が花びらに見える花には、アネモネクレマチスラナンキュラスデルフィニウム、キンポウゲ、シュウメイギクなどがあります。

  チューリップの立派な花びらも、花びらに見える6枚のうちの外側の3枚は萼です(画像)。このように花びらと萼がともに花びらのように見える花には、ヒガンバナ、クロッカス、アヤメ、ハナショウブ、ランなどがあります。また、八重咲きチューリップはオシベが花弁化したものだそうです。

 ドクダミも以前は花びらのように見えるものが、萼ということになっていました。ところが現在は、花びらのように白く見えるものは「苞」(「あるいは葉」)ではないかと思われています。

 このように、カラーリーフは形と色で、多種多様、変幻自在の姿で私たちを惹きつけています。花は飽くことなく変化し、枝分かれし、私たちの心をしっかり虜にしながら、強かに生存しています。

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ハツユキソウ

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ネグンドカエデ

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ガクアジサイ

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チューリップ

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ドクダミ