同じも違うも気持ち次第:ヒメジョオンとハルジオン

 「高級品も安物も、それをつける人の気持ち次第」と言われるが、どんなものも味噌も糞も一緒でありながら、変幻自在の百面相でもあると言うのがこれからの話。

 ラナンキュラスとダリアはよく似ている。だが、目を凝らすなら、二つの違いを指摘するのは易しい。人の視覚は変幻自在で、人により、場面により、見たものが「同じ」か「違う」かが入り乱れる。「似ている」なら何が、「似ていない」なら何が、と問い直しても、それが判然とせず、「同じ、違う」の判定は意外にややこしく、私たちはしばしば混乱する。

 具体例を挙げてみよう。ヒメジョオン(姫女苑)で、道端や空き地でうるさい程に花を見ることができる。一方、ハルジオン(春紫苑)は大正時代に渡来し、高さが30~100cmになる一年草または越年草で、茎は直立し、中空で、やわらかい毛が密にはえている。そのハルジオンによく似た花をつけるのがヒメジョオン。二つの見分け方として一番有名なのが、茎の中身が空洞(中空)か、中身が詰まっている(中実)かで、中実の方がヒメジョオン

 花の時期が早いのがハルジオンで、その次に咲くのがヒメジョオン。ハルジオンは春に咲く紫苑として、4月~6月頃で、ヒメジョオンは5月~8月頃。湾岸地域のハルジオンの花は白と薄いピンク色だが、ヒメジョオンの方はもっぱら白である。

 「ハルジオン」と「ヒメジョオン」はよく似た発音だが、「姫女苑」と「春紫苑」は違う文字であり、二つの植物の外観はよく似ているが、外観以外の見分け方は幾つかある。植物個体、呼び名の発音、呼び名の漢字がそれぞれ別様の類似、相異を示していて、全体として紛らわしいのがハルジオンとヒメジョオンということになる。同じ、違う、似ている等々の判断は異なるレベルで行われ、その上に全体としての相異まであり、何ともややこしい限りである。それでも、一応はハルジオンとヒメジョオンの同じ性質と違う性質を分別できるのである。

 兎に角、ハルジオンとヒメジョオンは異なる生物種であり、よく似ていても、二つは異なる種として識別可能であり、ヒトとゴリラほどの違いがある。だから、ヒトとゴリラが似ている程度にしか似ておらず、ヒトとゴリラが違う程度にしか違わないのである。

ヒメジョオン

ハルジオン