ナンテンからの思弁(1)

 冬の天候でいつも気になるのは故郷の雪模様。子供の頃は大雪を何度か経験した。雪は確かに生活を苦しめたが、子供には天からの心躍る贈り物だった。雪に埋まる風景も自然の美を垣間見せてくれた。そんな雪景色の一つが南天の実で、雪中の赤い実は私の記憶の中で今でも色褪せないのだ。子供の頃の記憶の中の実南天は次のように表現できるだろう。

 

南天の 実の鮮やかに 雪の中

寒さ増し 記憶の中の 実南天 雪に埋もれて 緋色際立つ

 

 さて、ここからは私の記憶の南天ではなく、植物のナンテンに話を転じよう。ナンテンは木本性のように見える。だが、茎が木質化しているため、そのように見えるだけで、実は常緑の草本植物である(*)。ナンテンは初夏から夏にかけて白色の花をつけ、丸い実が晩秋から初冬にかけて紅く熟す(画像はナンテンと熟した実)。実が白いナンテンはシロミナンテンナンテンは「難転(難を転じて福となす)」の語呂合わせから、縁起ものとして好まれてきた。

 和名「南天」は漢名の南天竹あるいは南天燭(ナンテンチュー)が転訛したもの。南天燭の「燭」は、実が「燭(ともし火)」のように赤いことからきている。実は消炎薬や鎮咳薬として用いられ,生薬名はナンテンジツ(南天実)。

*植物は習性や生活形式から類別できるが、身近な例の一つが草 (草本) と木 (木本) 。草本 (herb)は一年以内に開花、結実、枯死し、茎は木化せず肥大成長せず、木本 (tree)は多年にわたって開花、結実し、茎は木化し肥大成長する。しかし、草本と木本を明瞭に区別することは難しい。多年生で常緑の草本は少なくないし、ツゲ科のフッキソウは茎が肥大成長するが、木化しない。一方、タケ類は肥大成長しないが、茎は木化している。