交配と交雑についての中学生風の要約

 この2、3年で私が記した交雑や変種の主なものは次のような植物でした。

(1)シソ、エゴマ

(2)ヒイラギ、ヒイラギモクセイ、セイヨウヒイラギ

(3)サザンカ、ツバキ、カンツバキ

(4)ノゲシオニゲシ

 (1)と(4)がわかりやすかった例なのに対し、(2)と(3)はとても厄介で、いまだに不明瞭なままです。特に(3)については未だに不明な点がたくさんあります。

 そもそも交配と交雑の違いは何なのでしょうか。植物の場合、交配と交雑は「種を作り、子孫を残す」という点では同じです。では、交配と交雑は何が異なるのでしょうか?そこには、種を作るための親の組み合わせが違っているのです。

交配は同じ品種を掛け合わせ、種を作る:カンヒザクラ×カンヒザクラカンヒザクラ

交雑は違う品種を掛け合わせ、種を作る:カンヒザクラ×オオシマザクラ=カワズザクラ

 なお、人の手を介さずに行われる交雑は自然に起きた交雑で、カワズザクラはその自然交雑によって誕生した品種です。一方、ソメイヨシノは人為的な交雑(エドヒガンとオオシマザクラの雑種の交雑)によって誕生した品種です。

 交雑では異なる品種同士を掛け合わせることから、誕生した子孫は両方の親の性質を引き継ぎます。例えば、カワズザクラはカンヒザクラの赤い花色と、オオシマザクラの大輪の両方の性質を持ちます。すると、交雑にはメリットばかりがあるように思えますが、必ずしもそうではありません。カワズザクラの場合、カンヒザクラの性質を持つため、一般的なサクラに比べて開花時期が非常に早いのです。でも、開花時期が1〜3月頃のため、日本の気候に合わず、開花期に虫による受粉の恩恵をあまり受けることができません。そのため、普通のサクラに比べ、種子ができにくく、挿し木や接木などによって株を増やす必要があるのです。また、ソメイヨシノは全て同じ木のクローンですから、原理上種子を作ることができません。

 私たちの人種は多様でも、生物学上は同じ「ホモ・サピエンスHomo sapiens)」という種(species)です。様々な人種がいても、現生人類は「ホモ・サピエンス」という一つの種です。どの人種間でも混血が可能です(交配可能性)から、「人種」はせいぜい上記の「品種」という下位分類に過ぎないのです。

 種が違っても属が同じ、または近縁ならば交雑は可能です。生物が進化するにつれ、種分化(speciation)が起きていくのですが、分化の途中では「属」という同一カテゴリーに属すことになります。例えば、「ヒョウ属」に属するのはヒョウ、ライオン、トラ、ジャガー。これらの種の間で子供が生まれると、それが交雑なのですが、上記のサクラの場合と同じで、それら子供同士が子孫を残しにくいというのが最大の難点なのです。