楝の花

 「栴檀は双葉より芳し(せんだんはふたばよりかんばし)」とは、「大成する人は小さいときから優れている」という諺。この「栴檀」は中国では「白檀(ビャクダン)」のことで、まだ芽が出たばかりの双葉の頃から、とても良い香りを放つ木として有名です。

 東京メトロ有楽町線豊洲駅から豊洲市場に向けて「ゆりかもめ」の高架の下を歩いていくと、歩道の木々に花が咲き始めています。この木がセンダン(栴檀)で、別名はオウチ(楝)、アミノキ。残念ながら、ビャクダンではありません。秋に楕円形の実が枝一面につき、落葉後も木に残る姿が数珠に似ていることから「センダマ」(千珠)の意味で命名されました。

 植物のセンダンはビャクダン(白檀)とは違い、残念ながら双葉より芳しくはありません。センダンの花は変わっていて、5枚の花弁を持ち、10本の雄蕊が合着して紫色の筒になっています(画像)。その筒の先に葯(やく)があり、黄色い花粉が見えます(画像)。センダンはビャクダンのように芳しくなくても、センダンの花の香りは、とても甘く、高貴な香りです。

 昔のセンダンの呼び名は楝(おうち)で、それがそのまま色名になっています。淡く、やや青みがかった紫色です。楝色は藤色よりは濃く、深みを加えたような、青みの爽やかな色です。