アキニレの花

 「赤い夕陽が校舎をそめて ニレの木陰に弾む声」のニレはアキニレだろうか、というのが昔からの私の疑問だが、答えを追求する気などさらさらなく、勝手にアキニレだと思い込んでいる(北大のエルムのように、ハルニレの方がキャンパスには相応しい)。落葉樹の中ではアキニレの新緑は随分と遅く、4月中旬以降である。

 ニレはニレ科ニレ属に属する植物の総称。北欧神話では、男性を生じさせたセイヨウトネリコと、女性を生じさせたニレから全人類は生じたと言われている。また、ハルニレ姫の伝説はアイヌに伝わるものである。

 ニレという木はなく、日本ではハルニレ、アキニレ及びオヒョウの三種をニレと呼んでいるが、一般的にニレという場合はハルニレを指すことが多い。ハルニレは開花、結実が春だが、アキニレは9月頃に開花、結実するため、アキニレと呼ばれるようになった。アキニレの花はクリーム色で、その年に伸びた枝に咲く。雌雄の別がない両性花で、直径4ミリほどの釣鐘型で花の先端は四つに裂け、1本の雌しべと4本の雄しべがある。花の後には乾いた楕円形の果実ができ、11月頃には褐色に熟す。アキニレの樹高は概してハルニレよりも低い。