小川 未明(おがわ みめい、1882-1961)は、「日本のアンデルセン」、「日本児童文学の父」と呼ばれたのですが、戦後1950年代の童話伝統批判で集中砲火を浴びました。21世紀に入り、彼の作品は再評価され出しています。
未明は上越市に生まれ、父の澄晴は上杉謙信の崇拝者であり、春日山神社を創建しました。旧制高田中学、東京専門学校(早稲田大学の前身)専門部哲学科を経て大学部英文科を卒業、坪内逍遙や島村抱月から指導を受けました。相馬御風は中学以来の学友です。
青空文庫に「ふるさと」、「ふるさとの林の歌」がありますから、是非読んでみて下さい。そこに登場する「ふるさと」は未明のふるさと上越市を彷彿させるのですが、都会である東京との対比的な表現は確かに昭和のものです。私を含めて多くの人が、特に若い人たちはそのふるさと像が現代のものとは随分と違うと感じるのではないでしょうか。とはいえ、私を含めて、現在の日本人が「ふるさと」をどのように捉えているかと問われると、答えが見つかるとはとても思えないのです。
さらに、小川未明著、小埜裕二 編・解説『新選小川未明秀作随想70 : ふるさとの記憶』蒼丘書林、2015.7を読んでみるのがいいかも知れません。また、相馬御風のふるさと観と比べてみると、面白い対比が見られる筈です。