ヒイラギナンテン(柊南天)はヒイラギ(モクセイ科)とナンテン(メギ科)との交雑種ではない。ヒイラギナンテンは中国、ヒマラヤ原産で、中国で改良されたもの。ナンテンは秋から冬に赤い実をつけるが、雪の中の赤い実は私の子供の頃の記憶として今でも鮮明に残っている。私がマホニアを子供の頃に見たら、雪の中の黄色の花が記憶されたに違いない。5月頃に花を咲かせ、冬に真っ赤な実をつけるナンテンと、冬に黄色い花を咲かせ、6月頃に黒紫色の実をつけるヒイラギナンテンとはまったく逆の生活パターンをもっている。
最近はオタフクナンテン、ヒイラギナンテン、さらにはナリヒラナンテンといった名前をよく聞く。グランドカバーとして最近どこでも目にして食傷気味なのがオタフクナンテン(お多福南天)。ナンテンから作出された矮性種で、ナンテンとは相当外見が異なる。葉が短い楕円形で大きく、常緑樹なのに紅葉し(画像)、赤い実どころか、実さえつかない。
さて、ナリヒラヒイラギナンテンは、今はメギ科メギ属だが、旧ヒイラギナンテン属(マホニア)に分類されていたコンフューサという種で、それが品種改良され、「ナリヒラ」と名づけられた。ナリヒラという名前は、葉が細くてすらっと見栄えが良いため、美男子の代名詞である在原業平に喩えられたようである。
同じような葉を持ち、花期も同じものがホソバヒイラギナンテン(細葉柊南天)。二つの違いは小葉の長さと小葉の対となる数。ナリヒラヒイラギナンテンの小葉の長さは8〜15cmで葉の幅が狭く、小葉が5対以上になるのに対して、ホソバヒイラギナンテンは小葉の長さが7〜12cmと少し短くて葉の幅は広く、小葉は5対以下。とはいえ、私には区別がつきにくく、その上、ヤナギバヒイラギナンテンという名前もよく聞く。
こうして、私にはナリヒラヒイラギナンテン、マホニアコンフューサ、ホソバヒイラギナンテン、ヤナギバヒイラギナンテンはどれも同じで、ヒイラギでもナンテンでもない植物なのである。