いもり池:自然の逸品、宝物

 いもり池の畔に新しい妙高高原ビジターセンターが最近仮オープンし、いもり池の存在がさらに重要になっています。でも、私にはこの池が不思議極まる存在で、気になって仕方ないのです。

 『妙高高原町史』(1986年)には、いもり池でのヒツジグサスイレンの競合が記されているのですが、それが近年はスイレンが次第に優勢となり、終にはヒツジグサが駆逐されてしまいました。スイレンのいもり池独占支配は今も続いています。かつてのいもり池は自然の池ではなく、湿地を人工的に変えた農業用のため池でした。今もため池として実際に使われているかどうか、残念ながら私は知りません。

 新潟県の「農業用ため池データベース」(令和2年)に妙高市のため池31か所が記載されていますが、そこにいもり池は入っていません。また、妙高市には8か所の防水重点農業用ため池があり、そこには小出雲の松山貯水池や桶海の桶海溜池が入っていますが、いもり池の名前はやはりありません。蛇足ながら、上越市のため池は質も数もずば抜けています。日本のため池百選(農水省)に新潟県からは4か所が選ばれていますが、なんと上越市からは青野池、坊ヶ池、朝日池の3か所が選ばれているのです。

 新潟県観光協会はいもり池を人造池で、「国立公園第1種特別保護地区」と紹介しています(正しくは特別区域(第1種~第3種)の特別保護地区ということか)。そして、いもり池を紅葉の名所の一つとして紹介しています。

 こうして、いもり池はため池ではなく、まして農業用ため池でも、防水重点農業用ため池でもないことになっています。つまり、いもり池は単なる池で、国立公園の特別保護区域内にあるという存在です。

 いもり池の資格や分類がどうであれ、逆さ妙高を見ることができ、紅葉が美しく、周回路を散策でき、畔には妙高高原ビジターセンターがあり、自然観察をしっかり楽しめる場所であること、これらは疑いようがない自然の逸品、宝物なのです。