今の道端や野原は草花に溢れているが、そんな満面の緑の中に枯れたとしか思えない姿が見える。枯れて見えるのは葉緑素がないからで、その理由は他の植物に寄生しているため。それがヤセウツボ(痩靫)で、ハマウツボ科ハマウツボ属の寄生植物。地中海沿岸が原産で、日本には外来種として定着している。
葉緑素をもたないため全体的に褐色で、15-50cmほどの高さまで生長する。4-6月に12mm程度の大きさの唇形花を咲かせる。花には色があり、淡黄色で紫色のスジがある(画像)。寄生植物であるために、葉は鱗片状に退化していて、植物体に葉緑素はなく、褐色の腺毛が密生している。寄生主にはマメ科、セリ科、キク科などがあり、寄生根で養分を吸収している。野原のシロツメクサやアカツメクサによく寄生する(画像)。
「ヤセウツボ」の由来は同じ属のハマウツボよりも細い見た目をしているためで、その「ハマウツボ」の由来は花の形が矢を入れる靭(うつぼ)に似ているため(魚のウツボではない。これはウツボカズラもウツボグサも同様)。ヤセウツボはマメ科牧草の根に寄生する「侵入種」で、国立環境研究所のホームページでも紹介されている。一方、ハマウツボは環境省のレッドリストには載っていないが、北海道、福島県、高知県で絶滅種あるいは絶滅危惧種に指定されている。