不気味なシキミの実

 シキミ(樒)はマツブサ科シキミ属の常緑小高木。有毒で、実の形状は中華料理で多用される八角に似ていて、誤食されやすい(画像)。仏事に用いるためよく寺院に植えられている。また、漢字では「櫁」、「梻」と書かれることもある。花だけでなく、名前も字も不気味さが漂う。

 梻(しきみ)と榊(さかき)という漢字は、「仏」と「神」の違いを象徴している。実際、シキミは仏式葬儀でよく目にする花、植物である。一方のサカキはもっぱら神事に使われる。なお、「梻」は、国字と言われている。「サカキ」は神仏に捧げる常緑樹の総称だったが、平安時代以降には特定の植物を指すように変わった。また、シキミは仏の世界(天竺)にハス(青蓮華)と共に生えていると考えられていた。そのシキミを日本にもってきたのは鑑真と言われている。シキミは毒性が強く、強烈な香りを放つ。このため、香りによって獣を遠ざけ、遺体の腐敗臭を消す役目も持っていた。

 シキミは植物界で唯一劇物指定されている猛毒の持ち主。実、葉、茎、根のどれも毒をもっている。実に毒を持つ「悪しき実」から「悪」がとれ、「シキミ」という名前がついた。神々しいサカキに対し、毒々しいのがシキミということか…

*画像はシキミの花と実