ミツマタの花たち

 今私の周りではジンチョウゲ沈丁花)の花が咲き出し、強い香りがしている。その沈丁花の仲間がミツマタ(三椏)で、沈丁花ほどではないが、あちこちに咲いていて、その花はやはり春を告げている。ミツマタは中国、ヒマラヤ地方が原産で、名前の通り枝が三つに分岐するのが特徴である。赤い花をつけるのはアカバミツマタ。樹皮は和紙の原料となり、特に「お札」の原料として各地で栽培されてきた。

 ミツマタは新葉が芽吹く前の枝先に花だけが開花する。うつむくように下を向いて咲く花には芳香があり、小さな花が集まって半球形をつくっている。この小さな花には花弁はなく、花弁のように見えるのは筒状の萼の先端が四つに裂けて反り返ったものである。

 和紙の原料としてミツマタが登場するのは16世紀だが、既に『万葉集』に度々登場し、和紙の原料として使われていたという説もある。平安貴族たちが愛用した斐紙(ひし、雁皮紙)の原料にはガンピ(雁皮)だけでなく、ミツマタも入っていたようである。

*画像は黄色の花のミツマタと赤色の花のアカバミツマタ