トチノキの冬芽

 私にとってトチノキはとても気になる植物。子供の頃に栃餅を食べた筈なのだが、その味を思い出すことができず、それが今でも気にかかっていること、サルトルの『嘔吐』の中のマロニエの根が自分の考えるトチノキと随分隔たりがあると感じていることで、他の人にはどうでも良いこと。

 とにかく、ムクロジ科のトチノキは他の寡黙な樹木に比べると、とても派手で、歌舞いてさえいるように見える。とても大柄の樹で30mにもなり、葉のサイズはとびぬけて大きい。花も派手で大きく、目立つ。そして、トチノキになる「栃の実」は縄文時代から食べられていたもので、その実は大振りで、目立つ。このように私たちの関心を強く惹きつける要素をたくさん持っているのだが、忘れてならないもう一つが冬芽。

 トチノキの冬芽は樹の先端の頂芽が大きく、その下に間隔をおいて、横方向に葉を出すため側芽がついている。艶があり、触るとねばねばとした粘液をつけている。冬芽は多くの芽鱗に包まれ、しっかりと芽を守り、樹脂に覆われ、濡れているように見える。これは虫の侵入を防ぎ、防寒のためとも言われているが、他の植物では見られない。その正確な理由は今のところトチノキのみぞ知るということ。