ネコノヒゲはシソ科の特徴をもち、シソやサルビア類の草姿によく似ています。花から伸びる雄しべや雌しべを猫のヒゲに見立てて、命名されています。普通は夏に開花し、花色は白とうす紫です。その別名は英語名の直訳「キャッツウィスカー」や「クミスクチン」。花の雄しべは4つあり、雌しべとともに長く花の外に突き出して、上向きに反ります。
ジャノヒゲはキジカクシ科ジャノヒゲ属に分類される常緑多年草で、命名はネコノヒゲによく似ています。ジャノヒゲの葉が能面の「尉(じょう)面」の顎鬚(あごひげ)に似ているためにジョウノヒゲと呼ばれ、それが変化してジャノヒゲとなったようです。別名は葉が龍に似ていることから、リュウノヒゲ(龍の鬚)。
*ネコノヒゲもジャノヒゲも何とも叙述的、記述的な名前です。固有名がこのように記述の省略と看做すことができるなら、固有名は「省略された記述である」という考えを支持できそうです。でも、猫の髭のように見えても、単にそのように見えるだけに過ぎないと考え、単なるインデックスに過ぎないとするなら、固有名は偶然的に採用された名前に過ぎないとも考えられます。いずれにしろ、命名の経緯が命名の中に直接に反映されていることはなく、その意味で固有名は偶然的に命名されたに過ぎないのです。