ピラカンサの実

 ピラカンサバラ科ピラカンサ属の常緑広葉中高木。和名は常緑のサンザシに似た実をつけることから「トキワサンザシ」。タチバナモドキ、カンデマリもピラカンサと呼ばれている。タチバナモドキは黄色の実(画像)、カンデマリは平たい実をつける。ピラカンサはヨーロッパ南部から西アジアが原産で、明治中期に日本に渡来した。実がついてトゲが鋭いタチバナに似ている(ピラカンサの英名はFirethorn)。春から初夏に、木全体が真っ白に見えるほどの白い小さな五弁花を咲かせ、秋から冬にかけて、赤や橙の小さな実を枝が撓むほど沢山つける(画像)。実は艶やかで美しく、生け花、切花に利用される。実は野鳥の食料となり、糞によって種子が広がる。同じバラ科で同じ赤い実がなるナナカマドにも似ている。

 ところで、多くの果実が熟すと赤くなるのはなぜなのか。赤色は虫には見えにくい色で、種子を食べる虫は紫外線が見えるが、赤は見えない。だが、赤い果実は種子を運ぶ鳥にはよく見える。人類は、赤、青、緑を感知するために3種類の光受容錐体細胞を目のなかに持っているが、鳥は4種類の錐体細胞をもっており、その4つ目の錐体細胞がスペクトルの紫外線領域を感知できる。

 実は種の保存のために動物を惹きつけるが、赤、橙,黄色が多く、果肉も甘くなる(ピラカンサはその代表例の一つ)。だが、熟するまでは緑色で目立たず、味もまずく感じるように進化した。受粉の時以外は虫に来てほしくない。それゆえ、花びらは虫のために紫外域を反射したり、紫、白、黄色であるが、果実は虫に見えにくく、鳥やサルには見えやすい赤色が多い。

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タチバナモドキ