今年も8月11日から13日まで夏のコミックマーケットが有明の東京ビッグサイトで開かれた。「沈黙の祭り」と言いたくなるほど、集まる人々は静かで、孤立し、おとなしい。一方、富岡八幡宮の深川八幡祭は8月11日から15日まで。下町の水をかけ合う、賑やかな由緒ある祭りである。いずれの祭にも何十万人もの人出があり、真夏に大きな群れが雲海の如くうごめく。
とはいえ、深川にコミックは馴染まず、有明には御輿がやってこない。江東区の隣同士のエベントなのだが、その性格や参加者はまるで違っていて、群れの内容がまるで違っていると思われている。人が集い、群れる点では同じなのだが、二つの群れは月とスッポンと看做されてきた。
祭りの現象だけ見れば、一方はたいへん静かで、他方はとても賑やかで、うるさい。だが、それぞれの祭の中身を丁寧に見直すなら、共通する、似た要素が山ほどあることが見えてくる。それと同時に、異なる要素も様々に浮かび上がってくる。
人は群れながら、自らの意志や欲求をもち、群れの中で自己主張を繰り返し、群れと自分の衝突を常に感じながら、楽しみ苦しむことが、二つの祭りを通じて浮かび上がってくる。そして、多くの日本人は長い間、夏祭りと自分の関係を盆の暫しの間考えてきた。
実に単純なことだが、祭りについて考えることといえば、祭りをどのように持続するかであり、それはコミケも深川祭りも同じなのである。