枯れ尾花の正体は?

 オオミズアオ(大水青、Actias aliena)はヤママユガ科の蛾。日本では北海道から九州にかけて、国外では朝鮮半島、中国、ロシア南東部に分布するという。そのオオミズアオによく似ているのがオナガミズアオ( 尾長水青、Actias gnoma)。外見での区別は難しく、説明書きには様々な区別が述べられているが、きちんとした姿を見たことがない私にはこのような説明は馬の耳に念仏でしかない。

 兎に角、いずれもヤママユガ科に属する、綺麗な青白色の大型の蛾。オオミズアオオナガミズアオは翅を広げると10 cm程度になる大型の蛾で、オナガミズアオの方がやや小さいようだ。オオミズアオは翅の色の個体差が大きく、黄ばんだ色のものが多いが、オナガミズアオの場合は綺麗な青白色。両種の発生は年2回で、蛹で越冬し、4–5月に羽化、その個体が産卵したものが夏にまた発生する。オオミズアオオナガミズアオの生態の大きな違いは、前者がバラ科ムクロジ科(モミジ類)、ブナ科、ミズキ科などを食草とする多食性なのに対して、後者はカバノキ科(ハンノキなど)に限定されるようである。

 こんな説明をまとめても、本人がちゃんとした姿を見たことがないため、何かとても空々しい。学校で未経験の知識を無理やり憶えるようなもので、それに慣れているとはいえ、何とも後ろめたいものである。

 とはいえ、庭の端で目撃したのはすっかり枯れ尾花の蛾の個体で、瀕死の状態だった。蟻が既に集まって来ていて、その個体は直に動かなくなってしまった。確かに枯れ尾花で、手の施しようがなかった。その枯れ尾花は蛾の死の表情だったのだが、往時の華麗、優美な姿は十分に想像できた。残念ながら私にはオオミズアオオナガミズアオか区別はできなかったが、識者が見ればいずれか判定できたのだろう。

 Webでオオミズアオオナガミズアオの健全な画像を見ると、天女の如く透き通った妖艶な姿を容易に見ることができる。今の私には枯れ尾花から天女を想像するしかない。

*この蛾については月刊「ムシミル」、オオミズアオを参照してください。

https://insect.design/tyoumoku/garui/yamamayugaka/oomizuao