ビワの実

 ビワは実が主役であることを私に印象づけたのは坪田譲二の童話「ビワの実」。そこには樵の金十のビワを食べる体験と、ビワの木の再生が描かれている。ビワの木を見たことがなかった私には正に童話だった。

 ビワだけでなく、アンズ、ウメ、モモ、サクランボなどのバラ科植物の種子や未熟な果実の部分にも天然の有害物質(シアン化合物)が多く含まれているが、熟した果肉に含まれるシアン化合物はごく僅かで、食べることができる。

 ビワはバラ科の常緑高木。枝先に帯黄白色の五弁の小花をつける。開花は果樹の中ではとても遅く、実がなるのは翌年の5月(画像)。食用となるその実もビワと呼ばれている。原産は中国南西部で、四国や九州に自生する。

 このようにまとめてみても、雪国育ちの私にはビワの実はヤシ(椰子)の実ほどではなくても、馴染みが薄く、異国の果物というのが子供の頃の漠然とした理解で、雪とビワが共存せず、それが老いた今でも残ったままなのである。