デュランタ:子供の頃に見たことがなかった花

 自然には紫の花が多い。デュランタもその一つで、夏から秋にかけて花を咲かせる。花色が濃い青紫で、美しい小花を咲かせるものが一般的だが、白い花を咲かせる種類もある。日本へは明治時代に渡来。観葉植物や鉢花として出回り、沖縄などでは生垣としても利用されている。熱帯の花木で、冬は寒さで葉が落ちてしまうが、春になると株元から新芽が伸びてくる。デュランタの別名がタイワンレンギョウで、クマツヅラ科デュランタ属。中南米原産なのになぜ「台湾連翹」なのか。シナレンギョウ,チョウセンレンギョウはモクセイ科で、その上レンギョウは四弁花。もう一つの別名はハリマツリ(玻璃茉莉)。玻璃とは水晶,茉莉とはジャスミンのことで、花の形はジャスミンによく似ているが,なぜ「玻璃」なのかわからない。濃紫色の花びらに白い縁取りが入るデュランタの代表品種がタカラヅカ(画像)。タカラジェンヌの正装の袴姿に似ていることから命名された。

 何と呼ばれ、それがどんな由来かということと、その植物の本性とが同じでないことは珍しいことではない。人は閃いたかのごとくに自然を垣間見るものだが、言語的な追求、分析は命名の出発点にあるとしても、真なる本性に触れることは原理的にできない。なぜなら、言葉は人の都合でできたものだから。謂い回しを巧みに使ってもっともらしく説明することは、基本的に落語のようなもので、それがもつ効力は人の生き方に対してであって、語られる自然やその中の対象の本性とは本来関係がない。

 こんな屁理屈とは別に、確かにデュランタの花をつけた容姿は見事で、美しい。デュランタは子供の頃は見たことがなく、大人になって初めて知った植物で、子供の頃に強い感銘を受けた植物とは違う。知っている、特に子供の頃から知っていることが人の認識や世界観に大きな役割を演じてきた。デュランタが客観的で新鮮な印象を与えてくれる理由の一つは私が子供の頃に一度も見たことがなかったからである。だから、私はデュランタについて意図的に学習した。そして、そのことが私のデュランタ観の根っこにあるのである。