シャクナゲの花たち

 今湾岸地域ではあちこちでツツジが満開で、その花が風景を占領している。シャクナゲもそのツツジに負けじと花をつけている。昭和世代の私は「シャクナゲ」と聞くと、シャクナゲ自体より「しゃくなげ色に たそがれる はるかな尾瀬 遠い空」という「夏の思い出」の一節を思い出してしまう。そこに登場するシャクナゲ(石楠花)は高山種の花木。だが、それが最近は公園でもよく見かけるようになった。「しゃくなげ色」とは淡い紫みのピンク色を指すのだろうが、井上靖には大いに気になる花で、彼の短編に「比良のシャクナゲ」がある。

 シャクナゲにも園芸種が多く、最近ではセイヨウシャクナゲがよく出回っている。身近にあるシャクナゲは深山の高貴さを失ってしまったのかも知れないが、それでも私たちを惹きつけるに十分な魅力をもち続けている。日本の高山に自生する日本シャクナゲ(和シャク)に対して、欧米で改良されて日本に来たものは西洋シャクナゲ

 「ヒカゲツツジ(日陰躑躅)」の別名は「サワテラシ(沢照らし)」でいずれも意味深の名前。ツツジツツジ属の常緑低木である「ヒカゲツツジ」は日陰に多く生えることから、「サワテラシ」は河岸の岩場に生えることからつけられた。セピア色の花が咲くヒカゲツツジは厳密にはシャクナゲ。また、サッフォーはセイヨウシャクナゲの白花品種。サッフォーは白と紫の色の調合が見事で、華やかな色合いが多いシャクナゲの中では年寄り向き。