江間章子作詞、中田喜直作曲の「夏の思い出」で尾瀬は観光名所になった。尾瀬で水芭蕉が咲くのは5月末で、それは尾瀬の春先。ところが水芭蕉は夏の季語。夏休みに尾瀬に行っても水芭蕉の花は見ることができない。「水芭蕉の花が 咲いている 夢見て咲いている水のほとり 石楠花色に たそがれる はるかな尾瀬 遠い空」の石楠花も夏の季語。もっとも、こちらは石楠花「色」だから、咲く季節とは無関係か。
そんな想い出とは離れ、セイヨウシャクナゲにサッフォーという品種がある。セイヨウシャクナゲは色の鮮やかなものが多いが、サッフォーは意外に落ち着いた色合いの品種。近くの庭にこのサッフォーがあり、春から夏にかけて咲き、秋に入ってさらに咲き、今でも花を見ることができる。画像のように、サッフォーは白い花弁に濃い紫色の斑点が入る品種で、春と秋に咲く二季咲きのシャクナゲ。
花が咲く季節は年に一回だけと決まっているのではなく、何回咲いても構わないとなれば、一季咲き、二季咲き、さらには、四季咲きが思い浮かぶ。多くの植物には決まった開花期があり、四季がある温帯地域ではその開花期を表すのに季節名をつけて、春咲き、夏咲き、秋咲き、冬咲きと呼ぶ。季咲きが年に1回の植物は一季咲き、2回開花する植物は二季咲き、四季にわたって開花する植物は四季咲き。
季咲き性があるのは、規則正しく変化する昼と夜の長さを植物が感知して、花芽の形成をコントロールしているから。日照時間が長くなると花をつけ出す長日植物と、日照時間が短くなると花をつける短日植物とがある。長日植物には春に花を咲かせるアブラナやホウレンソウ、短日植物には夏から秋に花を咲かせるアサガオやコスモス、イネなどがある。
二季咲きはシャクナゲだけでなく、サクラにもある。一季咲きはソメイヨシノ、ヤマザクラなど、春と秋の二季咲きはジュウガツザクラ、コブクザクラ、春と冬の二季咲きはフユザクラがある。大抵の日本人にはサクラは春の花で、二季咲きや四季咲きのサクラが増えると、興ざめ感が否めない。