ヤツデと杉田水脈「『LGBT』支援の度が過ぎる」(『新潮45』、2018年8月号)

 LGBTレズビアン、ゲイ、バイセクシャルトランスジェンダーを指しますが、それ以外の「性的マイノリティ」も含めての総称として使われています。同性愛は「異端」として蔑まれ、国によっては犯罪として処罰されてきました。つい最近もプーチン大統領性的少数者などに関する情報の拡散や宣伝、示威行為などを禁止、制限する法律に署名しています。

 日本では杉田論文がまだくすぶっているようです。特に、「LGBTカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです」という主張には多くの人が反対してきました。『新潮45』は10月号で、「そんなにおかしいか「杉田水脈論文」」という特別企画を組んだのですが、かえって批判を増幅させる結果になってしまいました。

 様々な政治思想やイデオロギーが渦巻き、それは戦争暴力のように論争を過熱させることになるのですが、能力主義や優性思想のレベルではなく、「生産性」という言葉を最も単純な意味でキーワードにするなら、「雌雄異熟」のヤツデの話が生物の性と生産性について様々なことを示唆してくれていることに気づくのではないでしょうか。適者生存という利己主義的主張をするのがダーウィン主義という思い込みの中で、他者を優先する利他主義が集団の維持に貢献することが集団的なモデルを通じて様々に証明され、その実例も見つかってきました。それと同じように、ヤツデのような例を通じて、雌雄異熟が性的生産性に関して雌雄同熟に十分に匹敵することを私たちは見てきたばかりです。それと同様に、性的少数者の存在が集団の持続可能性に有利に働くことを類似の数理モデルで示すことができることを容易に想像できるのではないでしょうか。