キングサリと同じマメ科のフジ(藤)はつる性の落葉植物。本州、四国、九州の山野で見られ、普通は他の木に絡みついて育つが、庭では「藤棚」を作り、花を密生させて鑑賞する。
開花期は4~6月で花房は30-90センチほどに垂れ下がる。フジは「古事記」にもその名があるほど日本文化との関係が深い。開花期の幻想的な風景は多くの人を魅了する。
フジにはノダフジ(野田藤)とヤマフジ(山藤)の二つがある。二つはツルの巻き方が違い、ノダフジは上から見て右巻き、ヤマフジは左巻きになる。つまり、ヤマフジは時計と反対回り、ノダフジは時計回りになっている。ヤマフジの花房は10-20センチ程度と短く、幹はノダフジほど太くならない。
さらに、晩夏から初秋にかけて熟す豆のような実も美しい。でき始めは光り輝き、乾燥するに従って黒褐色に変わる。中には直径1センチほどの種子が数個あり、1月頃になって乾燥すると自然に裂開して遠くまで飛散する。
「藤紫(ふじむらさき)」は藤の花のような明るい青紫色のことで、平安の頃より女性に人気の高い『藤色』と、高貴な色の象徴である『紫』を組み合わせた色名。藤紫が染め色として登場するのは江戸時代後期だが、明治期の文学作品や美人画などに数多く見られ、明治文化を代表する色である。