赤い実の「赤」(1)

 多くの実が赤く熟す。種子を食べる虫は紫外線が見えるが、赤は見えにくい。だが、赤い実は種子を運ぶ鳥にはよく見える。実は赤、橙,黄色が多く、果肉も甘くなる。だが、熟すまでは緑色で目立たず、味もまずい。受粉の時以外は虫に来てほしくないため、実は虫に見えにくく、鳥やサルに見えやすい赤色が多い。

 ミツバチは黄色や白は感知できるが、赤が感知できない。だが、鳥は赤が感知できる。これだけでも、野生の花の色が白、黄色、紫、赤の順であるのに対し、実の色は赤と黒が圧倒的に多いことが何を示唆するか見当がつく。花の色を変えるハコネウツギに既に言及したが、受粉前の花は白色で、それによって昆虫を引き寄せ、受粉後は花の色が赤に変わり、昆虫に感知されなくなる。色の変化は受粉の効率化のためと考えることができる。
 実際、熱帯アジアの鳥類が実を選ぶ時に赤と黒の実を好む傾向があるという研究結果も出ていて、「多くの実が熟すと赤くなるのはなぜか」という問いに解答を与えてくれる。赤色は昆虫には見えにくいが、種子を運ぶ鳥にはよく見える。したがって、白い花と赤い実の組み合わせが種の保存には有効なことがわかる。

 このような説明では、虫や鳥が(植物の花や実のもつ)色を(私たちが見るように)感知し、その情報をもとに行動していることが前提されている。そして、例えば実の赤色は客観的に実在し、それが植物や動物の適応を促し、進化してきたことが説明されている。そして、物の物理的な性質と同じように、感知される赤色も物の性質として認められている。では、私たちが感じる色はどのように考えられてきたのか。私たちの色の感覚と虫や鳥の感覚は同じなのだろうか。

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アオキ

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アロニア

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サンゴジュ

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ジューンベリー