クランベリーハイビスカス(Hibiscus acetosella)は茎も葉も赤なので、「赤葉ローゼル」と呼ばれている。クランベリーハイビスカスは花だけでなく、葉も茎もよく似た色をしている。なぜ、葉、茎、花の色がよく似ているのか。
植物の各部分の色は細胞に含まれる色素によって決まり、その色素は遺伝子が決めている。バラに青い色の花ができないのは、青い色素を合成する能力がない、つまり、その遺伝子を持っていないから。実際、青い花の植物から青い色素の合成に関わる遺伝子を遺伝子組み換えでバラに入れてやることによって、青いバラができた。
複数の種類の色素とその含有量が色と色合いを決めている。花は葉からできた器官だから、葉も元来その植物の花の持つ色素に関係する遺伝子を持っているはずだし、花も葉が持つ葉緑素などの色素を合成する遺伝子を持っていても何ら不思議はない。
葉が花に分化したのは4億年以上も前のこと。その長い進化過程で、花は形態的(構造的)にも機能的(生理的)にも葉とは違った自立性のある器官になった。だから、現在、花と葉は異なる遺伝子を持っている。だが、時々先祖帰りのように、緑の花弁や、花弁が葉状になった変わりものができる。
実は起源から見れば、花は葉の変化したもの。何のために(Why)変化したかと問えば、それは目立つため。花の役割は虫を呼び寄せて受粉することだから、葉の色と同じでは虫に見つけてもらうことがうまくできない。となれば、画像のような花は虫媒花ではなく、風媒花なのだと推測できるだろう。
さて、このような一見成程と思わせる説明も、クランベリーハイビスカスが園芸種であることから、何か隔靴掻痒の感のある説明に見えてしまう。偶然の突然変異の珍しさを人為的に大切に保存したに過ぎないとなれば、上記の説明など吹っ飛んでしまう。
だが、クランベリーハイビスカスはアフリカに自生するハイビスカスの雑種と考えられている。アンゴラやスーダン、ザイールでは食用の栽培植物で、若い葉をサラダや炒め物にしている。となると、上記の説明は再度見直されることになる。